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魚だって困ります
子どもの頃に、水から出た魚の話を読んだ。
長い航海の途中で、船員が気まぐれに釣り上げて飼い始めた魚。ところがその水槽、気付かないうちにだんだんと水が漏れていき、船員が気付いたときにはすっかり水槽の中の水はなくなっていた。でも、とうの魚はまだ元気に生きていた。まるで、まだ水槽は水で満ちているかのようにすいすいと空中を泳いでいたのだ。そこで船員は、その水から出た魚を鳥かごに入れて飼い始めた。かなりシュールな設定のこのお話、童話だったのか小説だったのかも忘れてしまった。どうして船員がそのまま放置していたのかもよく覚えていない。最後には、鳥かごで飼われている魚を不憫に思ったか不快に思った仲間が、ある日その魚を海へ戻してやると、魚はすぐに海でおぼれて死んでしまった。
水から出た魚は、周囲の状況になじめないでいることをさす。けれども、この話のように、無理して自分を周囲に合わせてなじんだとしても、元にいた場所には戻れなくなってしまっていたという哀しい教訓もあるのだ。まわりに染まるか、自分の世界を貫き通すか。どちらがいいのかは、自分次第ということなのかも。
たとえば、スーパーマーケット。肉売り場にぽつんと1つだけ置かれた魚パック。もしかすると、この肉売り場にある方が目立って、買っていくお客がいるかもしれない。逆に魚売り場に戻したら、他の安い魚に負けて結局売れ残るかもしれない。う〜ん。どちらがいいのか。
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