A SKELTON IN THE CLOSET
外聞をはばかる隠された秘密

骸骨を行李に隠すこともできない住宅事情だった日本

 家族や内輪の秘密は、押入に隠した骸骨の死体のように隠されているものらしい。これが日本の場合だと、『行李に死体を隠す』なんていう表現になるのだろうか? 狭い長屋の日本ではちょっとそれは難しい。せいぜい共同炊事場だった井戸に死体を放り込んで隠す程度だろうか。それでも家族だけという小さなグループで隠す秘密ではなくて、長屋という、他人も入り乱れた、もう少し広いコミュニティでの秘密の共有になってくるのだろう。やはりこれは顕著に文化の差がでてくるイディオム表現だ。

 たとえば江戸時代の長屋で骸骨が見つかったら、世話好きな近所のおかみさんや大家さんを巻き込んで大変な騒ぎに発展していきそうだ。広い家、近所の家も離れているという欧米の設定ではちょっと考えにくい。押入に骸骨を隠し込んでいるのはやはり猟奇殺人の本場というイメージ。
 
 ちなみに、ゲイであることを公表するカミングアウトは、come out of the closet。このフレーズを聞くたびに、骸骨が押入からあちこちの骨をガタガタ鳴らしてでてくる姿が即座に思い浮かぶ。押入にはやはり秘密は隠しておかない方がいい。