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【3】影を付ける方法
イラレで影を付けるには、大まかに4つの方法があると思います。それは以下の通りです。
(1)グラデーションで塗る
…これが一番手っ取り早い方法ですが、「自分が意図した結果」に塗るには逆にテクがいる方法だと思います?。Fkashやその他のドローソフトでも良くある機能ですので、詳しい説明については省きます。
(2)グラデーションメッシュを使用する
…イラレ独自の機能ですが、上記(1)の「グラデーション塗り」に、中継点を追加して、複雑な向き・多彩な色数のグラデーションを表現できます。しかし今回は使用しません。グラデーションメッシュはSWFデータ上では、その部分がすべてラスタライズ(ビットマップ化)されてしまうので、データが重くなる上に、拡大すると表示が粗いので…。しかし、一番の問題は、『使い方が難しいから』ですが(笑)。
(3)影の部分に更にパスで描画する
…ペンツールでガシガシ描いていく力技です。影の部分をハッキリと塗り分ける「アニメ塗り(というんでしょうか?)」です。手間はかかりますが、自分の思った通りに塗り分けられるので、ある意味、最も簡単な方法とも言えます。
(4)ブレンドでボカシをつけた影をつける
…上記の(3)を利用して、『ブレンド』機能でのボカシのついた影をつけます。意図したボケ足をつけることができるので、技術としては簡単なのですが、手間が多く、パスが増えるので単純に作業時間とデータが増えます。
1.ベタ塗りの影をつける
影をつける部位によって、楽な方法があるので何通りか紹介してみたいと思います。
多分、他にもっと楽な方法もあると思いますが…。
(1)まず「コピー&ペースト」で作成する方法から
…影をつけたい部位を選択します。例は顔面部分で行います。左絵の肌色部分を選択した状態で「コマンド+C(コピー)」します。そのまま、「コマンド+F(前面にペースト)」を押します。これで、元々の肌色の部分の上に、更に同じものが乗っている状態になりました。
この状態で選択されているのは、「上に乗っている方の肌色パーツ」です。これを影に相当する「濃い肌色」で塗ります(下図)。

それを「拡大・縮小ツール」や「バウンティングボックス」で変形させます(下図)。今回の場合は、縦方向には変形させず、横方向に縮小します(長体変形)。その状態が下図です。もしこの状態で納得できないようであれば、ペンツールでアンカーのハンドルを修正します。もちろん影の付け方によっては、この方法では思う通りに出来ない場合もあります。

次に、首の部分の影をつけてみます。この部分はペンツールで直接描き込みます(左図)。
この後、この描き込んだ影を『カット』して、首の肌色部分を選択して『前面にペースト(コマンド+F)』します。こうすることによって、選択していたオブジェクトの1つ手前にペーストされます。
上図の2つの作業を繰り返して、全身に影をつけていきます。ほとんどの影は、ペンツールで直接描き込む感じです(中々、楽ができる箇所は無いんですよ)。また、影付けの作業を行いながら、前ページで説明した「線の強弱をつける」作業の『やり残し』を発見しつつ、作業を続けます。
更にこの辺りまで進んでくると、少しずつ手直ししたい箇所(デッサン崩れとか)が見えてくるようになるので、それもあわせて作業します。下記の図では、「首」の座りが気になったので、頭部の位置を変えたりしています。

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【4】影をアニメ塗りからボカシ塗りに
アニメ塗り…というのも変な表現ですが、左の(3)影の部分に更にパスで描画するのような状態から、(4)ブレンドでボカシをつけた影をつけるの状態への作業の説明です。この作業にはイラレの「ブレンド」という機能を使います。
ブレンドとは「A」と「B」の2つの図形を合成する機能です(下図参照)。
Flashに馴染まれた人ならピンとくるかもしれません。
シェイプトゥイーンに似てますよネ。上図であれば「A」星形から「B」丸型へ変形するまでの中割りをしてくれるのが「ブレンド」機能です。
はじめは難しいと感じるかもしれませんが、実はそんなに難しくないんです。上の図なら、「A」と「B」だけを両方とも選択した状態から、キーボードショートカットでコマンド+オプション+B(Winの場合はコントロール+オルト+B)を押すだけです。
もしブレンドを解除したいときにはショートカットにシフトを追加して、コマンド+シフト+オプション+B(Winの場合はコントロール+シフト+オルト+B)を押せばブレンドの解除が出来ます。簡単でしょ?
では実際の作業を説明したいと思います。まず簡単なところから。
左のベタ塗りの影をつける箇所で説明していた「顔」の部分でブレンドしてみます。下図を見てください。
これはわかりやすいように、ブレンドの影をつけたい顔の部分だけを抜き出したところです。
ブレンドしたい、影をつけた「濃い部分」と明るい「薄い部分」をダイレクト選択ツール(白い矢印)で両方選択して、コマンド+オプション+B(Winの場合はコントロール+オルト+B)を押します。
すると、選択していた部分同士が合成されて、その中間地点に中割りされたパスが自動生成されるんです。
左図がその状態です。
ただしここで気をつけなければならないのが、ブレンドされる諧調数です。デフォルトでは『スムーズ』という設定になっているのですが、これはイラレにお任せの「自動設定」に相当します。このままだと、値は大体が最大値に設定されるので、表示に時間がかかったり・データ自体も大きくなったりとあまり良いことは無いので、ブレンド数(中割りの段階数)を手動で設定し直してあげると良いと思います。ちなみにこの数値は一度設定してしまえば、イラレを再起動するまでは同じ数値設定が残りますので、その都度行う必要はありません。
では、実際のブレンドの設定ですが私の場合のブレンドオプションは「ステップ数」で設定し、数値は3〜10で行っています。ステップする距離が狭い・パーツ自体が小さいときには少なくします。また、ブレンドするオブジェクトの色の%差が少ない場合もそれほどステップ数は必要ありません。
逆にブレンドする幅が広い時や、ブレンドするオブジェクト同士の色(%や色相)が大きく異なる(緑から赤とか)場合はステップ数を多くとるやることによって、色が変化する部分のガタつきを目立たなくすることができます。逆に考えればあまりステップ数が必要ない場合は、値を小さくすることによってデータサイズを抑えることができます、…が一番の目的はあまり綺麗にブレンドすると絵柄がのっぺりしてしまうことを防ぐために、ブレンドするオブジェクト同士の色をあまり近くしない(似たようなパーツでブレンドしない)ことじゃないかと私は思っています。要はブレンドしてもあまり意味が無いところまでブレンドしないということでしょうか?
なので、さらに左図のように濃い部分のパスにアンカーを追加して、形状を変更しています。上図と比べるとけっこう手を加えているのが判ると思います。ブレンドする間隔を広くとり、その幅も強弱をつけることによりノッペリしないようにします。
さらに、眼窪の部分に影を落とすのに別のオブジェクトで作図するのがメンドいので、一発でやるために手抜きをしているポイントでもあります。
ここまでで、ブレンドの第一段目が終了です。作業を簡単に済ますためにはこれでも十分だと思います。
ただ今回は影を深く落としたかったので、顔の右側(手前側)にも更に濃い(暗い)影をつけてみたいと思います。状態的には「明るい肌色」→「濃い肌色」という現状に、さらに「影が落ちた肌色」→「近場の影」を追加したいと思います。
文章で説明するのが難しいので、図で説明します。

顔の左側(絵で向かって手前)の部分の影は上図のように作図しています。一番大きな「A」のパスが地色になります。今まで濃い肌色として使っていた色ですね。
「B」が新しく用意した「更に濃い肌色」です。濃い肌色よりも彩度を上げて色を鮮やかにして、明度を落とし黒を多くしています。「C」はもっと色を濃くしています。
この「A」「B」「C」のパスはまず、「B」をペンツールで描きます。形は適当で良いです。重要なのはパスの数です。あとから「A」と「C」に流用することを考えて、あまりアンカーを多くせず、出る場所と引っ込む場所に最低限のアンカーを置きましょう。そのアンカーを描く際の塗り色が「更に濃い肌色」になります。「B」を描いた直後は最前面にオブジェクトがあると思いますので、矢印で「B」を選び、「カット」し、肌色部分を選んで「前面へペースト」しておきます。
その直後(ペースト後、選択されたまま)の状態から、更にもう一度、「背面へペースト」します。「B」が2コ重なっている状態になります。その状態のまま、バウンティングボックス(もしくは変形ツール)で少し大きくします(Aの状態に近づくように)。
変形するのは、コピー元のオブジェクトと同じ大きさだと、アンカーが重なって選びにくいので、大きめにしておけば「大きい方がA」ということで判りやすいからです。…で、ある程度「A」の形を整えたら色を地色の「濃い肌色」にします。
次に再度、矢印ツールで「B」を選択し、そのまま「前面にペースト」し、その直後にバウンティングボックス(もしくは変形ツール)で、今度は縮小します(「C」に近づくように)。形が整ったら「B」の「更に濃い肌色」よりも色を濃くしておきます。
最後に、「A」「B」「C」を選んで「コマンド+オプション+B」でブレントします。その後、ブレンドされた状態からさらに微調整します。
上図では、「C」の更に上に髪の毛が落とす濃い影を縦のグラデーションで落としています。
鼻の部分は明るい部分と暗い部分で3つに分けてブレンドしています。
明るい側の影はこんな感じ。

濃い側の影はこんな感じ。

「D」の部分の色は「濃い肌色」を若干濃くしただけ。もう少し濃くしても良いかもしれないですネ、
ちなみに鼻の穴付近はこんな感じ。

3つのブレンドを重ねても、効果的にはまだこんな感じなので、リアルな描画を目指すならこの倍は描き込まないと…ですか。まぁ、絵の書き方に関しては、私はノータッチで(笑)。
とりあえず、ブレンドの基本はこんな感じ。
ここから更に、細かい部分の描画に進むんですが、まぁ続きはこれから。
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