戦禍の記録,無名の編纂者,50

■謎に包まれた原点

闘争を司る神、イーヴァン。その出自は謎に包まれているが、第五紀・調和の時代の文献からその名は確認されている。
かの神はかつては異端の革命指導者であったとも、不敗の将軍であったとも、凄惨を極めた第四紀・喪失の時代の少ない生存者であったとも伝わるが、その身元を明確に示す文献は残されていない。いずれにせよ、彼は調和の時代において何かしらの功績で神々の席次に名を連ね、はじめは「進化」という領域を司ることになった。

人類が星の海へと至るほどの文明を築き栄華を極めた調和の時代をイーヴァンは静かに見守った。停滞することなく、決して歩みを止めることのない人々の姿に、彼は無限の可能性を見出した。
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■負の神々との大戦

第六紀・闘争の時代。負の神々の勢力が台頭し、やがて世界を揺るがす神々の大戦へと発展する。人の可能性を何よりも尊ぶイーヴァンは、負の神々の傲慢を許さず、戦いに身を投じ、多くの敵を討ち滅ぼした。

大戦の終盤、『裏切りの公子』が反乱を起こす。イーヴァンは彼と熾烈な戦いを繰り広げ、数百年に及ぶ激闘の果てに片目を失う。しかし、最終的にはその心臓を抉り取り、封印することに成功した。力の核たる心臓を奪われた『裏切りの公子』は、その抜け殻ごとイルヴァのどこかに封じられたと伝えられる。
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■戦禍の神として

負の神々との戦いを終え傷ついた神々が地上の生命を一掃し、それぞれの領域へと帰還すると、イーヴァンもまたその流れに従う。傷を癒しながら、彼は神が介入をする必要のない世界の在り方について深く考える。思索の末、先の大戦の中で戦い、成長し、負の神々に挑んだ者たちから「闘争による進化」という新たなる可能性を見出す。

そして、結局は生命を一掃してしまった神々への当てつけか、曲がりなりにも新しき道を示しすきっかけとなった負の神々への彼なりの敬意か、イーヴァンは負の側面が強い「戦禍」に領域を改め、再び世界が大きく動く機を待った。
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■イルヴァへの帰還

永遠の盟約に従い、イーヴァンは永い時の中でイルヴァの興亡を静観していた。しかし、イルヴァが災厄の時代を経て再生の時代へと移り変わると、彼の名は歴史の随所で再び現れ始める。負の神々の復活の兆しや国家間の戦乱に加え、神の弑逆を企む簒奪者マニの台頭に、彼は長く待ち侘びていた変革の兆しを感じたのかもしれない。

現在の彼は人類の闘争を見守りつつ、時折優れた戦士を自身の領域へと召し上げ、力を蓄えているとされる。人類が進化を続け、その果てに神を脅かす日が来れば、両者は必然的に争うことになるだろう。イーヴァンが人類の味方となるのか、それとも越えるべき試練として立ちはだかるのか―その答えは、彼自身にしか分からない。
