巨木の下の小さな黒猫,不明,100

- 昔々、まだクミロミが神になる前のこと。

宇宙を漂う胞子のような姿をしたクミロミは、命の輝きに引き寄せられてイルヴァの地に降り立ちました。大地に深く根を張り、長い長い時間をかけて、やがて大きな木へと姿を変えたのです。


- 時が過ぎて、天界に一匹の小さな黒い子猫が生まれました。その子猫の名前はエヘカトル。彼女は猫の神様の家族の一員として生を受けたのですが、残念ながらその運命は厳しいものでした。

嫉妬深い姉猫のフヘトトルが、お腹に赤子を宿した母猫に毒を盛ったのです。
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生まれてきたエヘカトルの体は不完全で、その毛並みは、まるで不吉を象徴するように真っ黒でした。

それだけではありません。母猫は彼女を生んだあと命を落としてしまい、エヘカトルは「凶運のエヘカトル」と呼ばれ、地上に捨てられてしまったのです。


- 小さなエヘカトルは地上をさまよいました。

誰かと遊びたくて人間の子どもたちのもとに近づいても、その体は脆く、遊ぶたびに壊れてしまうので、みんな怖がって逃げてしまいます。

どこへ行っても不吉だと嫌われ、エヘカトルはひとりぼっちになりました。


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- ある日、疲れ果てたエヘカトルが森の中を歩いていると、大きな木のそばにたどり着きました。

彼女はその根元で肩を落とし、小さな体を丸めて泣きながら眠ってしまいました。すると、誰かが近づいてくる気配がしました。目を開けると、とても美しい少年が立っていました。

少年はやさしく微笑むと、エヘカトルをそっと抱き上げました。

エヘカトルはびっくりして逃げようとしましたが、少年の腕はあたたかく、しっかりと彼女を包み込みました。そして案の定、エヘカトルの体は壊れて中身がこぼれ出てしまいました。

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「また嫌われてしまう……」そう思って少年を見上げると、彼は変わらずやさしい笑顔を浮かべているではありませんか。

その笑顔に安心したエヘカトルは、久しぶりにぐっすりと眠ってしまいました。


- 目が覚めたとき、少年の姿はもうありませんでした。

けれど、それからというもの、その大木はエヘカトルのお気に入りの場所になりました。少年は、いつでも大木の影からそっとあらわれると、エヘカトルをやさしく抱き上げてくれるのです。

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彼女は何度も何度もその木を訪れ、少年を待ちました。ときには、もっと気に入られたくて、小さな少女の姿に変身してみることもありましたが、失敗してまた体を壊してしまうこともありました。

それでも、少年との時間はエヘカトルにとって幸せなものでした。


- しかし、その時代は「闘争の時代」として後世に伝えられるほど、恐ろしい時代だったのです。

時が経つと、争いの影は森にも忍び寄ってきました。

周りの木々が焼け落ち、不幸な出来事が次々と起こるたびに、エヘカトルは自分の存在が不吉だからだと悩むようになりました。

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- ある日、大木のもとで、彼女は少年に自分の生い立ちを打ち明けました。すると、少年はやさしくこう言ったのです。

「僕のエヘカトル。この大木を争いから守っているのは、君の幸運の力なんだよ」

少年は、大木こそが自分の本来の姿であることを明かし、彼女に「幸運のエヘカトル」という新しい名前を与えました。

その瞬間、二人は神聖な絆で結ばれたのです。

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- やがて、クミロミとエヘカトルは力を合わせて、争いの時代においても、すべての命が平和に暮らせる聖域を作り上げました。

そしてエヘカトルは、自分が「凶運のエヘカトル」ではなく、本当に「幸運のエヘカトル」だということを知るのです。


- おしまい。
