愛の破片,不明,100

<i>- 滅びの日 -</i>

あの日、神々がルシの姉妹月ラクリナを砕く瞬間を、私は地上から見上げていた。

月にまで到達した人間の驕りを、神々は決して許さなかった。粉々になった月と文明の破片が、数多の流星群となって地上に降り注いだ時、私はこの世界が終わるのだと思った。

しかし、私の記憶に今も鮮明に残っているのは、女神オディナ様の最後の声だった。

「人間たちはまだ未熟な赤子なのです。私の命をもって、彼らを守りましょう。エリスを、どうかお願い…」

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彼女は両手を広げ、その深い愛で、降り止まぬ死の破片を尽く受け止めた。

すべてが終わり、ぼろぼろになった彼女の亡骸を抱きしめた時、私は初めて神々の残酷さを憎んだ。


<i>- 嘆き -</i>

オディナ様を失った我が主の悲しみは計り知れなかった。

エリス様は姉上の遺骸にすがりつき、涙に濡れた声で呟いた。

「姉さま…なぜ、あなたが…どうして私ではなかったの？」

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「私が犠牲になればよかったんだ！姉さまと違って、役立たずの…死んだって誰も悲しまない私が！」

私は主にかける言葉を見つけることができなかった。

やがて彼女の涙が枯れると、オディナ様の魂の最後の滴を守るため、私達は元の次元へと戻ることを決めた。


<i>- 絶望 -</i>

エリス様は日夜、姉上の復活を試みたが、冷たくなったその肉体から、魂の熱は次第に消えていくようだった。

「なぜ…姉さまの魂を救えないの…！」

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その叫びが彼女の部屋から響くたび、私の心も引き裂かれるようだった。

エリス様の瞳からは光が失われ、彼女は深い絶望に沈んでいった。


<i>- エリス様の決断 -</i>

ある夜、主が私にこう告げた。

「防衛者、私は決めました。この体を姉さまに捧げます。たとえ私の存在がなくなっても、姉さまが戻るならそれでいい…」

「エリス様、お待ち下さい…！」

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止める言葉も虚しく、彼女は自らの命を絶った。

そして、彼女の犠牲もまた、失敗に終わった。その小さな身体に、オディナ様の魂が宿ることはなかった。


<i>- 魂の墓 -</i>

二紀もの時が流れた。永遠のように思える時間を、私は二人の魂の墓守として過ごした。

エリス様の体は朽ちることなく、まるで安らかに眠っているかのようだった。

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<i>- 復活の日 -</i>

ある日、エリス様の身体が微かに動き始めた。驚きとともに見守る私の前で、その器はオディナ様の魂を受け入れた。

彼女はすべてを悟った後、目を開き、私に語りかけた。

「防衛者、私はエリスの体を借りて蘇るべきではありません。この体には…新しい命が宿ろうとしています」

オディナ様は微笑み、言葉を続けた。

「エリスの犠牲は無駄ではありませんでした。小さく清らかな魂が生まれつつあるのです」

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「これから誕生する私達の妹に、この身体を託しましょう。その子が目を覚ましたら、ジュアと名付けなさい」

私は深く頭を垂れ、オディナ様の意志を受け入れた。


<i>- 無垢の少女 -</i>

少女には記憶がなかった。

その出生と肉体の秘密を私は隠したが、今は亡き彼女の二人の姉上のことを教えると、彼女は無邪気に微笑んで言った。

「防衛者、姉さまたちは立派な女神だったのですね。私も姉さまたちのようになれるでしょうか？」
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「ジュア様…癒やしの女神に相応しい存在であることを、あなたはきっと証明されるでしょう」

無垢な少女は、恥ずかしそうに頬を赤らめた。


<i>- 三姉妹 -</i>

オディナ様の愛、エリス様の犠牲、そしてジュア様の誕生――こうして、すべてが世界を紡ぐ糸となり、私は三姉妹の物語の証人となった。

命のある限り、私はこの盾で、ジュア様を守るだろう。

そして、ジュア様もいつか気づく日が来るだろう。彼女の中で、オディナ様とエリス様の魂もまた、彼女の成長を暖かく見守っていることを。
