夜明けと灰,悲しみに沈む娘,0

<b>記憶</b>

…なぜ、私はこれを書いているのだろう？

今更、父の名誉を回復することなどできないし、何が起きたかを覚えている神さえ、ほんのわずかしかいない。

おそらくこれは、真実を記すという私の身勝手な願い。うつろいし神々は特に邪悪だと言われていた―だが、父は違ったのだ。
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<b>守護者</b>

父は古代の狐族の文明を導いた守護の神であり、そのすべての民に霊感を与えていた。父は定命の者たちに助言を与えたが、支配することはなかった。彼らが自らの決断で成長できるようにするためだ。

父は彼の民を深く愛していた。だからこそ、王家の血と己の神血を交わらせ、その国に神の御印を授けた。私はその結果として生まれた。母は王の妹だった。

父はいつも、私の誕生が彼のイルヴァでの最初の記憶を思い出させると言っていた。
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私は父の傍で育ち、父の叡智を学んだ。私たちは定命の者たちを見守っていたが、彼らの一員ではなかった。母が老いても、私は老いなかった。母の死を嘆いたが、父は私に、我らは異なる存在なのだと教えた。おそらく父は、助言してきた王たちと同じように、自らの業を継ぎ、それを築き上げる後継を望んでいたのだろう。


<b>啓発</b>

理解してほしい。神も定命の者たちも、同じように暴力的で残酷だ。父はそれを変えようと、長い年月を費やしてきた。
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定命の者たちの命は短い。記憶は薄れ、書物は朽ちる。だからこそ、神である父が彼らを退歩から守り、祖先の過ちを繰り返させぬようにしていた。父の導きのもと、彼の文明は少しずつ前へ進み、ひとつの世代が次の世代の礎となった。

継承という概念は、神にはない。多くの神は己の後継など必要としないからだ。しかし父は望んだ。私が子を愛し、私の子がまたその子を愛すことを。そしてそれが続いてゆくことを。民のように、互いの上に積み重なっていくことを。

その歩みは遅く、前進の一歩ごとに大きな努力と苦痛を要した。だがそれは誇り高く、高潔な文明だった。父と私はそれを誇りに思っていた。
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だが悟りは訪れなかった。争いが常に父の業を打ち壊したからだ。争いによる成長という思想は、すぐに結果をもたらす。火は早く広がり、眩く燃える。だがその果てに何がある？力か？ならば、それをどう使う？

争いは怪物を呼び集め、互いに喰らい合えと命じる。勝者には超越を与えると囁きながら。しかしその約束は虚しい。死と暴力から生まれたものは、それ以外を知らぬ。父の道を拒んだ定命の者たちが、たとえ神を打倒したとしても、かつての主と何が違うのだろう。
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<b>告白</b>

…それでも、なぜ私はこれを書いているのか。

神々は、父をただ野心に溺れた邪悪な者だと思っている。

叔父も叔母も、父を夢想家だと笑った。

だが真実は―父を殺したのは、この私だ。

父は民を愛していた。だがもし私が存在しなければ、父は神々の戦に介入することはなかっただろう。彼はただ、争いのない小さなイルヴァの地を望んでいた。神と定命の者たちがともに栄える場所を。そして何よりも―彼には娘がいた。もしおまえに子がいたなら、その未来を与えるために天地をも動かそうとはしないか？
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私のために、父は暴力を断つという誓いを破り、それが彼を滅ぼしたのだ。


<b>希望も恐れもなく</b>

六つの紀が過ぎた。

父が見守った狐族の文明はもう存在しない。父が静かに守っていた小さな聖域も、今は灰となった。私はその民の唯一の残り火であり、父が何を成そうとしていたかを知る唯一の存在だ。

もう涙はない。私は石の仮面を被り、心は何も感じない。父の運命を恨むことも無意味だ。あれほど私のために戦った父を思えば、ここで死を選ぶのは不孝というものだが、神を失った使徒に何の意味がある？
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時折、目覚めた心を持つ定命の者たちを見かけると、思うのだ。彼らを獣以上の存在に導けるのではないか、と。共に生き、高みに至らせることができるのではないかと、霊感がそう告げるのだ。私は神と王の血を受け継ぐ者。父の戦いを継ぎ、神となることもできるのだろうか？

だが、神と定命の者たちに未来がないと知っている私に、希望は存在しない。

天は無数の宝を神と定命の者たちに授ける。

されどその恩に報いる徳を持つ者は、ひとりもいない。

争いの炎の中で滅びゆく運命を見た私に、恐れは存在しない。
